時には昔の話をしようか……(非連載 世界樹の迷宮二次創作小説 Etrian Odyssey 01)

レビューとプレイ日記だけなコンテンツも味気ないので
とりあえず小説でも書いてみようかと……。
一応、通常ストーリーのクリアまでのネタバレになってますので
B25Fまでクリアしていない人は見ない方が無難です。

多くの語られない挫折の上に一つの英雄譚は生まれる。

戦いは終わった、君たちはついに世界樹の王との決着をつけたのだ。
死闘の果てにその場で息を整える君たちはふいに扉の開く音を聞いた。
君たちが振り返るとそこには以前戦った二人組みの冒険者の姿があった。


レン
「どうやらヴィズルに勝ったようだな。君たちは本当に強くなった」
ツスクル
「……」
レン
「さて、これで君たちはこの迷宮の秘密を総て知ってしまったわけだ。
それで、これからどうする?
街に帰りその冒険の総てを明らかにするかね?
きっと君たちは街の英雄になれるだろう」


レン
「それから、それからどうする?
街はどうなる?
君たちは本気で街の事を考えた事はあるかね?
ヴィズルが死んだ後、世界がどうなるか、君たちには分かっているのか」


レン
「昔話をしようか。
かつても、君たちのように樹海の謎の根源にまで近づいたある冒険者たちがいた。
彼らは樹海を踏み越え、数多の魔物を打ち倒し、
自分たちこそが最強のギルドだという自負と共に
樹海の総ての謎を解き明かそうとしていた、そう君たちのようにね」


レン
「そして、彼らもまたこの場所にたどり着き総ての真実を知りヴィズルと戦う事になった。
よく似ているだろう?
ただ彼らが君たちと違ったのは、彼らはヴィズルに破れたということだ」


レン
「彼らが負けたのは君たちより弱かったというわけじゃないさ。
その冒険者たちの中にいた一人の剣士が、
迷宮の謎を総て明らかにする事を
そしてヴィズルを倒す事を躊躇して刀を振る事ができず
力を合わせる事のできなかったパーティはあっけなく崩壊した……」


ツスクル
「その後、その剣士だけが生き残ったものの意識を失い倒れたのを
長はモリビトの村へ連れて来て介抱させた」


レン
「そして、剣士が目覚めるとヴィズルは剣士に
樹海の秘密を守る事に力を貸すように頼んだ、ということだ」


レン
「そんな時、君たちならどうしたかな。
仲間たちの仇に力を貸すなんてことはできるか?
それとも、あくまで樹海の秘密を公にしようと
敵わぬ相手に向かっていくことはできるか?」


レン
「意味のない問いだったな。
君たちはまず、躊躇せず力を合わせ戦う事ができ
そして仲間も死ぬこともなかっただろう。
こうして今ここにいるのだからね」


レン
「昔話は終わりだ。
君たちは街に戻るがいい。
もはやここには君たちの欲する物は何もない。
ここは、守るべき物を守りきれなかった
そんな力なき物が眠る、ただそれだけの場所だ」


そういうとレンは君たちから視線をはずし
世界樹の王の亡骸の元まで行き、そこで膝をついた。
君たちはそんな彼女の背中を一瞥した後、街に戻る事にする。


アリアドネの糸を使うと君たちの姿は迷宮から消え
すぐに街に現れるだろう。




君たちが消えた後、
レンはゆっくりとヴィズルの骸に手を伸ばしそっと触れる。
ツスクルはそんなレンを見つめながら、途切れ途切れの言葉をかける。


ツスクル
「レン、いずれにしろ、いつかは訪れた事です」


レン
「判っていたさ、彼はもう生きる事には飽いでいた。
彼は、自分がかつて行った事を見守る事
自分がかつて失った世界を取り戻す事
そして、いつかそれ自分と世界のなすべき事が終わること
いつもそれを見ているだけで、一度も今を見ることはなかった」


レン
「結局、ヴィズルにとってはエトリアも、多くの冒険者
そして私も気に止まるような物ではなかったんだ」


レン
「だから、これが私も彼も本当に望んでいた結末なのかもしれない
もう、疲れていたんだ、過去と未来、届かぬ想い
虚構ばかりを見つめて今から目をそらし続ける事に」


ツスクル
「長はあなたの事をいつも気にかけていましたよ」


レン
「それは、私が秘密を知る者だったからな……。
一つ教えてあげようか、私がこうしてヴィズルに直接触れるのは
実はこれが初めての事なんだ」


ツスクル
「レン」


レン
「もういいさ、総ては終わった事だ
また私は何一つ守れなかった、それだけの事だ」


ツスクル
「レンっ」


レン
「すまない、しばらく一人にしてくれないか……」


ツスクル
「レン……」


レン
「大丈夫、そんな顔をしなくても。
今はまだ……、大丈夫だ……。
私はまだこれからを、ヴィズルが居なくなった後を
見届けなければならないから。
それが、私にできる唯一の残ったことだからね……」


レン
「だから今だけ……、今だけ一人にしてほしい……」


ツスクル
「レンのしたいように……」


ツスクルはそう告げると、
レンに背を向けて扉の向こうへと消えていく。
シュンッと扉の閉まる音を確認し
レンはゆっくりと王の骸の上へと
その身を重ねていく。


レン
「ツスクル、すまない……。そして、ありがとう……」


そうしてレンはヴィズルの亡骸に身をゆだね
ツスクルは閉じた扉に持たれかかりながら
ゆっくりとお互いの瞳を閉じていった……。

あとがき?

うひゃー……。
なんでしょ、このエンディング無視の妄想小説は……。


私の脳内では
亡き妻と世界←執政院の長←レン←ツスクルという
妙な構図がもはや確固たるものとしてできつつあって
その妄想を爆発させたらこんな感じになってしまいました。


いやほら、じゃないと
レンがあんなに長に加担してるのも理由がわからないし
レンは過去にとらわれ過ぎてるとか
レンがしたいならとか、ツスクルの発言は意味深だし……。


おでこの傷とかはかつて長に負けた時に付いたものだったり
ツスクルとの出会いは、モリビトの村で看病したのが
ツスクルだったりとかそういう妄想が炸裂しています。


今回は地の文章はゲーム中のナレーションを意識して
極力控えめにしてセリフを中心で回してみましたがどうでしょう。
ほとんど描写がなくてつっけんどんになった上に
後半崩れちゃってるのでちょっと反省。


小説は今後もなんかネタに困ったら書こうと思いますんで
まあよしなしに。