期待させて期待に答えるのは難しいなら、期待させて期待以上に答えるのは如何ほどだろう(『世界樹の迷宮』レビュー9 事前の期待対して)

トラックバックキャンペーンも今日で最後ですね。
今日はとりあえずレビューのまとめとか
全クリまでは行きそうにないけどプレイ日記とか
書けるだけ書いていこうと思います。
# それっていつも通りってことでは?


さて、事前に感じていた魅力と不安に対して
世界樹を実際にやってみてどうだったのか
というレビューは今回で最終回です。
# この後、もうちょっと細々としたレビューはやるかも。


最後は、不安において
期待しすぎにならないかが一番の不安と言っておいたので
世界樹の迷宮』はその期待に対して
どうだったのかということを。


世界樹の迷宮』は
Wizファンを含む3DダンジョンRPGファンや古代ファン
高難易度でやり応えのあるゲームを待ち望む人
その他マニアを狙い撃ちにするという事を
最初から打ち出して来ていたゲームであり
だからこそ、発売前から非常に熱い期待が寄せられていた。


特に後述もするけど、
どういうゲームにするのかということが
(マニアにとっては)とても具体的で想像しやすく
かつ、なんとも魅力的で非常に共感できる事だったので
期待はこれでもかという程盛り上がった感じがある。


それはネットでの盛り上がりや
発売日にソフトが一気に店頭から消えた事などにも
全体のパイは必ずしも大きくはないけれど
その限られたマニアの期待感は非常に高かった事が現われていると思う。


自分もむしろ期待しすぎと言っていいくらい
世界樹の迷宮』に対しての期待があり
それが不安になるくらいだった。


さて、そして実際にゲーム発売されてみて
その期待に対して『世界樹の迷宮』はどうだったのかというと
これは自分には期待以上の出来だった、と言っていいと思うし
他の評判も上々な感じだ。


これは結構すごい事だ。


自分にしてもそうだけど
この手のマニアっていうのは口ばっかりうるさかったり
細かい処ばかりをつついてみたり
自分の既存の守備範囲の物をむやみに信奉するような傾向があって
マニアを狙って来る物に期待はするけれども
高望みしすぎて低く見てしまう事って多い。


いかにも普段は3DダンジョンRPG
もっとどんどん出ればいいのになんて思っていても
いざ出てみるとアレに比べて何それが足りないだの
結局はやっぱりWizがよかっただの
そんな調子ばかりでせっかくの芽も潰しちゃうことも多い。
# これは3DダンジョンRPGに限らずマニア層の強いジャンルだと何でも。


そんな中で『世界樹の迷宮』がこれだけ受け入れられているのは

  • 世界樹の迷宮』そのものがゲームとしての面白さをまず外していないこと
  • 事前に期待させていたことを、しっかり外さずに作ってきたこと

という失望させないだけの物をきちんと備えた上で

  • 明瞭で今までにない物をはっきりと打ち出せていること

にあるんじゃないかと思う。

ゲームとしての面白さ

何を置いてもダンジョンRPGとしての骨子である
ダンジョンでも戦闘でも工夫してプレイできるので
1階1階をクリアしていくことに楽しみが大きく
非常に面白いゲームになっている。


その上でなんと言ってもテンポがいい。
ユーザーインターフェイスも充分といえる程度。
これら快適なゲーム性により、
面白さを阻害する物がほとんどなく、
素直にゲームを楽しめる。
# ロードが長いゲームなんて、どんなに面白くてもそれだけで楽しくない。


世界樹の迷宮』は3DダンジョンRPGなので
本質的にこの2点がしっかりとしていれば
ゲームとしての面白さは及第点。

期待していたことを外さない。

  • WizライクなシンプルなダンジョンRPG
  • 高難易度のやりごたえ。
  • 古代によるFMサウンド


等々、事前にマニアを釣るための
撒き餌としてでていた情報に違わず
はったりや誇大広告にもならず
その通りのゲームが作られている。


個人的には事前に「期待していた処」に関しては
期待から外した処はほとんどないように思う。
ゲームとして細かく注文をつけたい処はまだまだあるが
「期待していた処」は本当に見事に抑えてあった。


これは一つに、
提示していた物が極めて具体的な事を
中心にしていたからだろうと思う。


それは最初から作り手にも受け手にも明瞭な魅力であり
またどういう物かが判りやすいので
中身のない美辞麗句とは違い
充分な期待を喚起することができて
そして実現する際にも外すことなく出来たのだろう。


具体的な魅力を持つ事で
要る物と要らない物をきちんと取捨選択できるようになるので
労力をポイントを絞って注力でき
その必要な部分をしっかりと作り上げる事ができる。


# 例えばシンプルなダンジョンRPGを作ると決めてあれば
# 壮大なストーリーやムービー・ボイス等は
# なくてもいいどころかむしろ不要なので
# そこにリソースを費やす必要なく他に集中できる。


これは逆に言えば、ゲーム製作の早いうちから
力を入れられるポイントを絞って作らざるを得ない
小規模の製作だからこそ
具体的でピンポイントな魅力に的を絞れたともいえる。

今までにないもの。

しかし、上記の2点だけでは良作にはなっただろうけど
口うるさいマニアを黙らせて引き込むのは無理だったと思う。
それが出来たのは他と比べられない
世界樹の迷宮』だけの魅力があるからだ。


それは当然、タッチペンでの手書きマッピングだ。


もちろんマッピング自体は
今までの3DダンジョンRPGにも当然やる必要があった要素だ。
でも、まずそれはこんなに快適なマッピングではなかった。


そして、本質的に違うのは『世界樹の迷宮』は
マッピングしてマップを完成させる事自体が
ゲームの一つの目的になるくらい
マッピングする事の比重が重くて楽しいということだ。


自分にしても『世界樹の迷宮』を実際にやってみるまで
ここまでマッピングするだけで楽しい
というような事はそこまで想像してなかったんじゃないかと思う。


3DダンジョンRPGマッピングを行う事
それは今までのゲームにだって必要だった事で
# それが手動にしろオートマッピングにしろ。
チマチマと方眼紙を埋めて
マップを完成させる喜びというのは知っていて
それが『世界樹の迷宮』で出来ればいいと期待はしていたが
それはダンジョンクリアのための一つの作業であって
マッピングする事そのものが楽しい、
という快感を与えてくれたゲームは
世界樹の迷宮』が(少なくとも自分には)始めてである。


よって、『世界樹の迷宮』だけの魅力を言い直すなら
タッチペンでの手書きマッピング作業自体に楽しみを見出させた事
と言うとよりよく伝わるだろうか。


そしてこの楽しみは
従来のいささか苦痛だった方眼紙へのマッピングを行っていた者や
やや味気ないオートマッピングでプレイしていた者など
3DダンジョンRPGのマニアほど大きく感じるように思うので
煩型のマニア連中にも賞賛を持って受け入れられたのだろう。

期待させて期待に答えるのは難しい。

期待させて期待に答えるのは難しい。


世界樹の迷宮』への期待は
むしろ期待しすぎが不安になるほど
高く並々ならない物だったのだから
その高い期待に答えてかつ超えていくのはすごい事だ。


ましてや『世界樹の迷宮』は自分からすると
ある意味、期待を裏切ってそれ以上の出来だったり
想定以上の楽しさを与えてくれた。


期待させて期待に答えるのは難しい。
期待させて期待以上に答えるのは
それを考えると本当にすごい事だ。


もちろん『世界樹の迷宮』というゲームには
これまでもちょこちょこ言ってきたように
物足りない所や不備な部分もあるので
世界樹の迷宮』がゲームとして完璧だとか
そういうわけではない。


それでも、自分のこれだけの「期待に答える事」に対しては
完璧に答えたゲームだったと言える。